概要
讃岐鉄道Ａ1形蒸気機関車は、1888年（明治21年）から1901年（明治34年）の間にドイツのHohenzollern（ホーヘンツォレルン）社で7両が製造されて、讃岐鉄道が輸入したタンク式の蒸気機関車です。1888年には2両が輸入されて讃岐鉄道の1号機と2号機関車となりました。
軸配置は「Ｂ形」です。すなわち、先輪や従輪を持たず動輪のみ2軸の軸配置の機関車でした。「Ｂ形」とはいえ1067ミリ軌間の機関車で、同じ「Ｂ形」の軸配置でも762ミリ軌間用の伊予鉄道甲1形蒸気機関車と比べると明らかに大きな機関車でした。動輪の大きさは直径1190ミリメートル、石炭積載量は0.91トン、水タンク容量は両側の合計3.5キロリットルで、全長は6927ミリメートルありました。
本形式は讃岐鉄道で1889年（明治22年）以降3回にわたって増備されており、まず1889年に1両（3号機）、1894年（明治27年）に1両（4号機）、1901年（明治34年）に3両（11号～13号）が輸入されて、総勢7両となりました。讃岐鉄道は13両の機関車を保有しましたが、本形式がその過半数を占めていたことになります。
讃岐鉄道は1904年（明治37年）に山陽鉄道に吸収合併されたため、7両とも山陽鉄道に引き継がれて29形129号～135号に改番されましたが、さらに2年後の1906年（明治39年）には山陽鉄道が国有化されたため官設鉄道籍となり、1909年（明治42年）に鉄道院60形60～66号機関車となりました。鉄道院時代には姫路や神戸方面に移されて小単位の列車運転に活躍しました（いまむら，1963）。
1927年（昭和2年）に5両が廃車されましたが、残った2両は戦後の1948年（昭和23年）と1950年（昭和25年）まで奈良機関区で入換用機関車として活躍しています。また、1927年に廃車された5両のうち1888年製の60号機と61号機（元讃岐鉄道の1号機と2号機）は新京阪電鉄（のちの阪急電鉄）に移り、1435ミリメートル軌間に改造されて1938年（昭和13年）まで新線建設に使われました（臼井，1956）。
山陽鉄道時代の写真(国鉄80年記念写真集、車両の80年 P3より)