甲武鉄道K1形蒸気機関車は、明治21年(1888年)から明治29年(1896年)の間にイギリスのNasmyth Wilson(ナスミス・ウィルソン)社で6両が製造されて甲武鉄道が輸入したタンク式の蒸気機関車です。明治期のタンク式機関車の標準形態となった軸配置「1B1形」の量産機でした。官設鉄道82号形蒸気機関車と同形の機関車です。
明治21年に輸入された最初の2両は官設鉄道によって輸入され、いったん官設鉄道82号形蒸気機関車の141号、143号となったあと、それほど間をおかずに甲武鉄道に譲渡されたと見られています。というのも甲武鉄道は明治22年(1889年)4月11日に最初の路線である新宿-立川間を開業させますが、これの建設工事に使われたと考えられるからです。甲武鉄道に移った後はK1形とされ甲武鉄道の1号、2号機関車となりました。
甲武鉄道が牛込まで延伸開業した明治24年(1894年)に2両(4号機と5号機)が増備されました。3号機が飛んでいますが、甲武鉄道3号機は元山陽鉄道のテンダ式機関車がすでに存在していたため、その続番とされたものです。明治26年(1896年)に最後の2両が増備され、甲武鉄道8号機と9号機関車になりました。
軸配置は「1B1形」。すなわち、まず先輪が1軸あって、2つの動輪が続き、最後に従輪が1軸ある形態です。動輪の大きさは直径1321ミリメートル、石炭積載量は1.14トン、水タンク容量は両側の合計3.86キロリットルでした。その他の性能は官設鉄道82号形蒸気機関車と同じです。
明治39年(1906年)に甲武鉄道は国有化されます。それに伴ってK1形の6両も官設鉄道籍となり、明治42年(1909年)に鉄道院600形蒸気機関車となりました。
日本鉄道の同形機(国鉄80年記念写真集、車両の80年 P11より)